人獣共通感染症連続講座(山内一也)(第118回 ) 2001.6.30
プリオンの高感度検出法(および117 回一部修正)
1.プリオンの高感度検出法
本講座110回と115回でBSE牛についてのプリオン検出法の開発の
現状をご紹介しました。そこには名前が出てこなかった研究所からユニ
ークなプリオン検出法がNature 411, p. 810(6月14日号)に発表されま
した。スイスのジュネーブにある、セロノ医薬研究所(Serono
Pharmaceutical Research Institute)のガブリエラ・サボリオ(Gabriela
Saborio)たちの論文です。
これまでウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)な
ど、プリオン病の診断は、異常プリオン蛋白質(PrPSc:scrapie-type
prion proteinの略)の検出に依存してきています。110回で述べたよう
に、現在、BSEについては3社のキットが実用化されています。これらは
ウエスタン・ブロットやELISAによるPrPSc検出です。どれもが、検出感
度を高める工夫を施されていますが、脳の中でもPrPScが高い濃度で
見つかる部分の組織についての検査であって、微量のPrPSc検出は
できません。
これとは別にさらに高感度の方法として、マウスへの脳内接種で発病
を見る、いわゆるマウス・バイオアッセイがあります。これは、通常の
ウエスタン・ブロットよりも1000倍くらい高い検出感度と言われていま
す。ただし、潜伏期が1年以上あるために、実用にはなりません。
セロノ研究所の方法は、ちょうど核酸の場合のポリメラーゼ・チェーン
反応(PCR)のように、サンプル中のPrPScを増幅して検出しようという、
新しい方式です。その概略をご紹介します。
PrPSc として用いたのはスクレイピー(ハムスターに順化させた263
K株)を感染させたハムスターの脳の乳剤です。これを希釈し、それに
正常プリオン蛋白質(PrPC:cellular prion proteinの略)として正常なハ
ムスターの脳乳剤を加えて試験管内で培養します。これによりPrPSc
(蛋白質分解酵素抵抗性の)の量の増加が認められます。つまり、過
剰に加えられたPrPCがPrPScに構造変換したことになります。それを
音波処理にかけて、凝集しているPrPScをこまかくして、ふたたびPrP
Cと培養します。
このようにして、培養-音波処理のサイクルを繰り返すことでPrPScの
量がだんだん増加していきます。これを彼らはprotein-misfolding
cyclic amplification (PMCA)と名付けています。
5サイクルでPrPScの増加率は平均58倍でした。10サイクルでは、
PrPScサンプルを1万倍以上に希釈しても検出でき、これはマウス・バ
イオアッセイと同等、もしくはそれ以上の感度であると述べています。
この方法が改良されれば、潜伏期中の動物の診断にも応用できる可
能性があります。
未発表だが、孤発型CJDの患者の脳のサンプルにも、この方法が
応用できたとも述べています。
一方、プリオン説では蛋白質が病原体とされていますが、その決定
的証拠として、試験管内で作り出したPrPScについて感染性を証明す
ることが考えられます。これまでのところ、これは成功していませんが、
今回の方法で多量にPrPScを増幅できれば、プリオン説の裏付けに
も役立つ可能性があると、著者たちは述べています。
2.117回の一部修正
OIEのInternational Animal Health Codeの和訳「国際動物健康綱
領」を「国際動物衛生規約」に修正してください。
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