人獣共通感染症連続講座(山内一也)(第135回 ) 2002.9.11

ニパ 類似ウイルスがカンボジアに存在する可能性

 1998年10月から99年4月にかけてマレーシアで養豚にたずさわる人々 に発生したニパウイルスについては、本講座で何回かご紹介してきました (73,74,78,80,82,97,102)。 これまでに、何種類かのオオコウモリからはニパウイルス抗体が見つかり、 また、ヒメオオコウモリの尿からニパウイルスが分離されたことから、 ニパウイルスの自然宿主はオオコウモリ属であって、まずオオコウモリ からブタが感染し、ブタの体内で増えたウイルスがヒトに感染を起こ したと考えられています。  CDCの特殊病原部のトム・カイアゼク(Thomas Ksiazek)たちはカンボジ アでの調査の結果、現地のオオコウモリにニパウイルスに類似のウイル スが存在する可能性を、Emerging Infectious Diseases, Vol. 8, No. 9(9月 号)に発表しています。その内容をまとめてみます。  CDCとカンボジア保健省・国立公衆衛生研究所の共同チームは、プノン ペンのレストランで、オオコウモリの血液を採取し、血清を分離してアトラン タのCDC本部に送り、そこで検査を行いました。オオコウモリはハンター が捕獲し生きたまま、レストランに食用として持ち込まれたものです。  オオコウモリはマレーシアの場合とは別のライルオオコウモリ (Pteropus lylei)で、その96の血清のうち11(11.5%)が酵素抗体法と ウイルス中和試験の両方でニパウイルス抗体陽性という結果でした。  十分な量があったサンプルについてはヘンドラウイルス(旧名、ウマモー ビリウイルス)に対する中和試験も試みた結果、ニパウイルスに対する中 和試験と同じ成績で、両方陽性または両方陰性となりました。ニパウイル スとヘンドラウイルスは中和試験では、ほとんど交差しませんので、彼らは カンボジアにはニパウイルス、ヘンドラウイルスのいずれとも異なる、類似 のウイルスが存在していると推測しています。  ニパウイルスの場合には、ブタの体内で増幅されたウイルスがヒトに感 染を起こしました。オオコウモリから直接ヒトに感染した証拠は見つかって いません。マレーシアでの大発生の原因には、大規模養豚産業がかかわ っています。カンボジアでの養豚は小規模でマレーシアのようなことは起こ らないと、彼らは推測しています。しかし、脳炎とのかかわりについての調 査が必要と指摘しています。  また、未発表の成績として、インドネシアでも別のオオコウモリにニパウ イルス類似のウイルスに対する抗体を見いだしているそうです。
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